鈴川博紀さんのインスタグラム写真 - (鈴川博紀Instagram)「#泳ぐのに安全でも適切でもありません  #江國香織  . 小学二年か三年生の夏、数ヶ月だけの水泳教室に僕は通っていた。そこは屋内で温水で、そこの名前はボンジュールみたいな感じのフランス語だった。泳ぎを教えてくれる先生は何人か居たし若くて、監視員も十分に居た。そこは泳ぐのに安全で、適切な場所だったんだと思う。 泳ぐのは好きだった。別に得意な方では無かった。どちらかというと得意なことは折り紙とか体を動かすこと以外のことの方が多かった。でも泳ぐことは、自由に手足を伸ばしても何にも遮られないが、それと同時に常に水に包まれているのが心地よくて好きだった。 . 夏の終わり、水泳教室の最終日に僕はそこで溺れかける。 潜ってたらちょうど頭上の水面に大きめの扉くらいあるでかいビート板がやってきた。(子供たちはそれに乗って遊んでた)驚いた。水面に突然天井が出来たから。めちゃくちゃ焦った。何度叩いても、どれだけ激しく叩いてもその扉が開くことはなかった。もがきながら手を伸ばしたらビート板の端にどうにか手が届いて、水面から顔を出せた。 絶対にここのプールは安全だと思い込んでたからこの出来事が余計に怖かった。そしてどこもかしこも何かしらは危険で不条理が潜んでいるんだって思うと絶望した。 . 泳ぐのに安全でも適切でもないところで泳がなきゃならないこともある。 そこでは息も出来ず、水面には見えない天井がある。ゴーグルの中にミチミチと水が忍んでくる。中では身動きがちっとも取れないほど重たい水がある。下を見れば誰かに足を掴まれてるかもしれないし、上を見れば誰かに頭を押さえつけられてるかもしれない。 そんな息詰まるような生活を送る女性10人が描かれた江國さんのオムニバス。 息が詰まっていることに慣れようとしたり、誰かと一緒に溺れることに快楽を覚えたり。 もがいてても甘んじてダラけていても人の姿。面白かった。  読後はフォークを聞いた後みたいな感覚になった。「かなしくてやりきれない」とか「今日までそして明日から」とか。」10月18日 18時12分 - hirokisuzukawa

鈴川博紀のインスタグラム(hirokisuzukawa) - 10月18日 18時12分


#泳ぐのに安全でも適切でもありません
#江國香織
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小学二年か三年生の夏、数ヶ月だけの水泳教室に僕は通っていた。そこは屋内で温水で、そこの名前はボンジュールみたいな感じのフランス語だった。泳ぎを教えてくれる先生は何人か居たし若くて、監視員も十分に居た。そこは泳ぐのに安全で、適切な場所だったんだと思う。
泳ぐのは好きだった。別に得意な方では無かった。どちらかというと得意なことは折り紙とか体を動かすこと以外のことの方が多かった。でも泳ぐことは、自由に手足を伸ばしても何にも遮られないが、それと同時に常に水に包まれているのが心地よくて好きだった。
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夏の終わり、水泳教室の最終日に僕はそこで溺れかける。
潜ってたらちょうど頭上の水面に大きめの扉くらいあるでかいビート板がやってきた。(子供たちはそれに乗って遊んでた)驚いた。水面に突然天井が出来たから。めちゃくちゃ焦った。何度叩いても、どれだけ激しく叩いてもその扉が開くことはなかった。もがきながら手を伸ばしたらビート板の端にどうにか手が届いて、水面から顔を出せた。
絶対にここのプールは安全だと思い込んでたからこの出来事が余計に怖かった。そしてどこもかしこも何かしらは危険で不条理が潜んでいるんだって思うと絶望した。
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泳ぐのに安全でも適切でもないところで泳がなきゃならないこともある。
そこでは息も出来ず、水面には見えない天井がある。ゴーグルの中にミチミチと水が忍んでくる。中では身動きがちっとも取れないほど重たい水がある。下を見れば誰かに足を掴まれてるかもしれないし、上を見れば誰かに頭を押さえつけられてるかもしれない。
そんな息詰まるような生活を送る女性10人が描かれた江國さんのオムニバス。
息が詰まっていることに慣れようとしたり、誰かと一緒に溺れることに快楽を覚えたり。
もがいてても甘んじてダラけていても人の姿。面白かった。

読後はフォークを聞いた後みたいな感覚になった。「かなしくてやりきれない」とか「今日までそして明日から」とか。


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2020/10/18

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