日暮愛葉のインスタグラム(aiha_higurashi) - 3月30日 16時00分
「天窓」
寝室のどう考えても必要と思えない所に
小さな天窓がある
夏は眩しくて黒い布で目隠しをしないと
朝日で起こされるはめになる
雨の降る日はうるさいし
大嫌いな雪の日は積もる雪が見える
だからわたしは
季節が変わっても目隠しを
付けたままにしていた
彼ががこの家に住みつくようになってから
不思議そうに
何故天井に黒い布を貼っているのかと尋ねるから
ありのままを話した
するとあなたは
雑に留めた画鋲を1つづつ丁寧に外して
天窓を眺めた
いいんじゃない?
と
言って
画鋲を纏めて本棚の上に置いた
なんなんだろうこの人は
と
疑問に思いながらも
また
説明して目隠しを貼り付ける気力も無かったので
とりあえず放っておいた
彼はその日からベッドにぺたりと座って良くその天窓を眺めるようになった
時にはタバコを吸いながら
時にはコーラを飲みながら
時には何も持たずに
私はなんだかわからないけれど
なぜそうするのか
聞くことが出来なかった
それから1ヶ月が経っても
彼はほぼ毎日その天窓を眺めていた
そのこと以外
彼に何も変わったところはなくて
私もその行動を気にも留めなくなった
3ヶ月くらいして
彼が家に帰ってこない日が増えた
それから徐々に
彼はなんとなく私を遠ざけるようになり
そのうち家に来ることが無くなった
彼が去ったことは
大してショックでもなかったけれど
ぼんやりと天窓を眺めていた
あの姿を思い出すと
私は少し気味が悪くなり
前と同じように天窓に
黒い布で目隠しをした
少しほっとした私は
彼も天窓もない部屋で昼寝をした
詩/日暮愛葉
Art work by AIHA HIGURASHI
2023年3月30日
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2023/3/30