山下航平のインスタグラム(kouhei_yamashita_official) - 7月16日 21時05分
『クーポン』
#フィクションエッセイ
最近はクーポンを使いやすくなった。
クーポンはもともと新聞の広告に入っていたり、雑誌のページにあったり、街中で配っていることが基本だった。
ミシン目にそって丁寧に切り取って、使うかもわからないクーポンを財布に忍ばせたり、
期限の切れていることに気がつかないクーポンを大切に持ち運んでいた。
今は、紙のクーポンを見かけることも少なくなった。
私の行く飲食店ではクーポンがインターネットやアプリ経由で発行されていて、会計の時にそれを見せれば割引が適用される。
電子でかさばらないというのは素晴らしい。期限の切れたクーポンはそっと電子上の世界に廃棄され、電脳空間上を漂い続けているのかもしれない。
私はずっとクーポンを使うのが苦手だった。
レジでクーポンを使おうとして、
「あのー、このクーポン?って使えたりしますか?」
使う気満々なのに、使えることを知っているのに、
あたかも、たまたまクーポンがあったし、たまたまクーポンが使えるみたいだから使っちゃおうか、せっかくだし。みたいな感じのフリをする。
本当は家でクーポンが使えるかどうかを何回も確認していたとしてもだ。
そもそも「クーポン」という言葉の響きがあまり好きではない。「クー」までは良い、「ポン」と言っている自分の顔がバカそうでどうも好きになれない。
なぜクーポンを使うのが苦手なのか。
おそらく店員さんに対して、クーポンを使うことを知られるのが恥ずかしのだ。
確かに、店が提示している料理を定価で買えばいい。
しかし私は、どうせ同じもの食べるなら少しでも安く食べたいという卑しい心があるから、クーポンを使おうとする。(すごい考えだ!)
だから、店員さんに
「こいつ、クーポン使ってまでハンバーグ食べてんじゃねえよ。」
と思われることが心底怖いのだ。ケチだと思われたくないのだ。
知らない誰かに対してもついついかっこいい自分でありたいのだ。
しかし今は違う。
レジはセルフが増えて、お店によってはネット決済で事前にお会計を済ませることができるようになった。
店員さんに顔を合わせてお会計をするという機会が少なくなったのだ。
全て自分で完結する。
自分が頼んだ商品を店員さんに知られないまま、商品を受け取ったり、お会計を済ませられたりする。
つまり、店員さんに「ケチくさいやつ」と思われる機会が減ったのである。
私みたいな人にとっては、進化する技術のおかげでとても生きやすいシステムが構築されたのだ。
それでも私は、クーポンを使った時は振り返らず逃げるようにお店を後にする。
*このお話はフィクションです。
実在の人物や団体などどは関係ありません。
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2023/7/16