日暮愛葉のインスタグラム(aiha_higurashi) - 4月12日 20時13分




好きになった男がいた

ある朝その人が隣にいたらいいのにと思った日があった

人を好きになるという事は
どういう仕組みなのだろうとも
何度も考えた

答えは思った通り見つからず

夢に近いような
妄想に近いような
どうでもいいような

でもふと
その人を想うと
私は彼を想う沢山の様々な虫の
中の一つであり
忌み嫌われる蝿位の存在でしかないかもしれないとぼんやり考えた

私はいつの日からか
誰からも好かれない対象であると
思うようになって

それは耐え難いけれど
私自身も
同じように
誰のことも愛せずにただ
薄い闇のかかり始めた夕暮れの様に
誰にも見られず
誰にも気にされず

このまま少しの呼吸だけを
繰り返して
生きてゆくのだろうなと
つまらない歌人の書いた歌を眺めていた

もう昔のようにその本を破り捨ててしまおうとか
夕闇を眺めても押しつぶされる情熱は見当たらず

ただ自分の力で死んではいけない
という
つまらない決まり事を
丁寧に守っているだけ

好きな男がいた頃は
様々な景色が見えたけれど

たまに
寝る相手を
愛するふりをする
自分に疲れきった

夜中になって
誰もいない公園のブランコに乗って
普段吸わない紙タバコに火をつけると
たまらない気持ちが溢れ出した
流れない涙はなによりも重く

私は揺れるブランコを後にして
闇の中で唯一明るく光る
自販機で缶コーヒーを買った

そこに見つけた夏の蝿だけが
愛おしかった

詩/日暮愛葉

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2023/4/12

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