武井義明さんのインスタグラム写真 - (武井義明Instagram)「井川メンパの弁当箱、底に ─── 静岡縣安倍郡井川村 ─── そして ─── 標商㋴大村定一製造 ─── とある。実家で使っていたものを1984年にもらった（上京するときに持って来た）んだけど、そもそも、いつのものなんだろう。安倍郡井川村は1969年に静岡市に編入しているし、「商標」は右横書きだし（1952年に姿を消した）、「県」は旧字だし（新字体は1950年代以降）、まあ半世紀〜70年くらい経っているんじゃないだろうか。作者の大村定一さんは、ネットでは調べようがなかった。近畿大学所蔵の『大井川流域民俗語彙』がＰＤＦで公開されているのを見つけて読んでみたら、（おそらく）1900年くらいの大井川流域は、狩猟と農作の文化が色濃く、アニミズム的な自然信仰が強かったのがわかる。ほんの100年ちょっと前なのに、まるでどこか遠い国の先住民族のようだ。そしてそこにメンパの持ち運び方が出ていた。川狩衆（大井川の漁師たち）は風呂敷の対角２点を結べるように残し筒状に縫った「ウチガエ」という布バッグにメンパを入れて、腰に結びつけていたのだという。筏乗りは、落ちにくいよう背負ってもいたらしいが、丸いメンパではなく、より、ずれにくい角（かく）メンパを使ったともあった。このＰＤＦを読んでいたら、藤守という地区の男たちは茶師（焙煎師）としての技術にすぐれていて、茶どころへ（資料からしておそらく井川に）季節技術労務者として出稼ぎに行くさい、紺の六尺褌を締めたことから「クロフンドシ」と呼ばれ、よその茶師を煽り出してしまう勢いで仕事をしたとあった。かっこいいですね、クロフンドシ。藤守って焼津の海岸の地名なんだけどそこに高い技術の焙煎師がいたというのも面白いし、海の男たちだからそんな格好だったのだろうか。ちなみに日当の安い小娘の茶摘みは「アカコシマキ」、ベテラン茶摘み娘（たぶん娘じゃない）は踝まであるほど長い木綿で紺縞の「コシゴロモ」を着けていたそうだ。どちらもかっこいい。と、メンパの話から茶摘みの話になってしまいましたが、故郷に近い民俗系の話はなにかと深入りできちゃいますね。」10月26日 14時46分