平原綾香さんのインスタグラム写真 - (平原綾香Instagram)「. 冬が来た。大事な人がいない冬は寒くて手がかじかむ。平原家では、寒い日になると “今誰が１番、手があったかいか選手権”が突如、開催されるのがお決まりだった。勝者はいつだって、父だった。父は生前、どんなに寒くても絶対に手袋をしなかった。理由を聞くと「本番、どんなに寒いステージであっても手がかじかんでサックスが吹けなくならないように普段から手袋はしないんだ」と。それを聞いてから、私も手袋をしなくなった。そのこだわりがきっかけでものすごい事になったことがある。昔、カナダから函館まで船で運ばれた大きなクリスマスツリーの前で歌ったことがあった。海に浮かぶフローティングクリスマスツリーだ。気温はマイナス。海のすぐ横でのステージ。吹雪の強烈な寒さの中での生放送だった。撮影スタッフさんが、私のマイクを一生懸命、カイロであたためてくれていたが吹雪の中だったため、カイロもカチコチに固まってしまっていた。しかし、私も普段から手袋をしなかったため意外と鍛えられていたのだろう。マイクを持つ手は、意外と無事だった。すると、私が手袋をしていないのに気がついたカメラマンさんが「おい！みんな！平原さんはこんな寒さでも手袋をしないでがんばっているんだ！僕らが手袋をしている場合じゃない！平原さんが寒さに耐えているのだから僕らも手袋を取ろう！」と。あ、いや、これは違うんです！いつものこだわりで手袋をしてないだけでスタッフのみなさんはちゃんとしてください！とお願いするも、すでにみなさんの耳には届かず。雪を溶かすほどの熱い想いを持ったカッコいい撮影チームは次々に手袋をとり、さらに団結したのだった。忘れられない、冬の思い出。父の、サックスにかける熱い想いは時を超えて、誰かの心をも燃やすのかもしれない。 2023 11.26 父の手」11月26日 23時41分